2010年9月11日土曜日

幻想

 経済成長=景気回復=豊か という幻想が刷りこまれてしまっているようだ。もともと経済成長の追求は、手段にすぎなかった。社会主義社会の出現した状況のなかで資本主義では生産の拡大=「豊かな社会」が想定された。ところが生産を拡大するために技術革新をすすめると単位当たりの労働力需要が減少して失業問題が発生する。世界大恐慌の失業問題の教訓から生産性の向上と完全雇用の実現というこの矛盾する問題を解消する手段が、技術革新で不要となった労働力を吸収するくらいに生産量を増やして経済発展を図ることだった。その経済発展のひとつの指標が経済成長率なのだが、この経済成長率が伸びれば「豊かになる」という幻想がいつのまにか定着しあたかも経済成長率数値が大きくなれば「豊かになる」と思い込んでいる。
 そして「経済成長率をあげること」にやっきになり、国民も「望んで」いる。
 しかし、国民にとって必要なことは完全雇用が実現することである。バブル以後はっきりみえてきたことは、生産が拡大し、経済が発展し、企業が大きくなっても雇用は拡大せず安定もしないで国民の生活は豊かにならない。いくら経済成長率が大きくなり経済が拡大しても国民の失業もくらしの豊かさ(安定)も実現しないことである。

 建設労働者に引き寄せてみてみよう。
 「景気がよくならないと・・」の声が多い。しかし、バブル以後景気はいくども「良く」なった。ではその時仕事は安定し賃金は上がっただろうか?。賃金は20年間下がる一方で仕事はますます厳しくそして不安定になっている。建設生産額を建設労働者数で割った『労働生産性』などは論外として、実際の現場でのひとりひとりの生産性は、技術革新による『合理化』と低単価の労働密度の強化で飛躍的に高くなっている。昔の倍以上働いて身体は疲れ切ってしかも収入は減っている。
 デフレといわれ、物の価格は下がっているがそれ以上に賃金は下がり、しかも賃金の低下には歯止めも底もない。
 経済が成長しても景気が良くなっても生産性が上がっても、建設労働者の賃金は上がらず仕事もくらしも良くならない。
 もうそろそろ、「景気が良くなる」=仕事が増えて賃金が上がり「豊かになる」という幻想は捨てよう。

 必要なことは、建設労働に労働を安売りしないルールーをつくり、無用な技術革新から労働の豊かさを復権することだ。


 

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