2010年8月27日金曜日

床屋で考える

 床屋に行った。理髪をされているのは心地がいい。髪を刈られながら考えていた。昔は床屋はほとんどが個人経営でその昔は徒弟制度でその後インターン制度の時期もあった。田舎に床屋が多いのは、田畑を貰えない次三男が店と家の分の土地分けて貰って開業していることもある。
 理容師・美容師は国家資格である。現在大型店やシャンプーをしない格安店が増えている。そのためにこれまでの町の床屋は苦戦している。難しい仕事である。なにせいつ客が来るかわからなくても店を開けて店にいなければならない。客が来た時に居なければそれでお客は別に行ってしまう。
 それはともかく、町の床屋のほとんどが理容組合に入り、協定価格を決めていた。例えば私の住む地方の理容協定料金は3800円前後である。大型店や格安店が出現するまでは、それが通用して物価の歴史的な比較にもよく理髪代金が使われている。しかし、格安店は散髪だけであるが1500円である。その結果多くの人が格安店に行き、村の床屋は一日中看板を回しながら客の居ないソファーで過ごすことになっている。もちろん格安店でも混んでいるのは土日祭日くらいであとはポツポツといつたところだろう。1500円のうち職人の手取りはいくらであるかは知らないがおそらく800円位だろう。道具のバリカンは基本は自分持ちのようである。たえまなく客が来たとして一人30分平均でも時給にすれば1600円。
 一方店持ちの自営業者は、たえまなく客が来て一人60分にすれば時給(時間収入)3800円だがそれから経費と店の維持費を引けば2000円? しかし、客がいなければ手取りはどんどん下がる。
 そもそもなにを考えていたかに戻ると、床屋は小規模自営を前提として理容組合を作ってきた。もちろんそのなかで雇う職人の手間の相場も決まっていたが、組合に入って料金を協定していたのは事業主だけであり、職人には組合がなく賃金の協定もなかったのだろう。「町の床屋」の時代にはそれでも事業主も職人もそこそこ暮らしてこれたのだ。
 大型店や格安店の進出に対して理容組合は、衛生規則などをテコにしていろいろと対策や行税への陳情をやっているようだが、衰退はとめられない。それでは格安店などで働く理容師の賃金がよいかといえば先の計算ではとても良いとはいえない。
 なにが欠けているのか? やはり理容師そのものの賃金額の協定や協約がないからではないだろうか。この業界で働くには「国家資格」を持っていなければならない。実際、理容組合はそれをテコにしてこれまで協定料金を作ってきた。ところが、それは事業主だけの、理容料金だけの協定であることに大穴があった。もし働く者の賃金の協定であったならば、また雇う側と雇われる側の労働協約であったならば、どの店でも基本的に料金は決まり、大型店でも格安店でも町の床屋でも大きな金額の差もそして働く者の賃金の差もないのではなかろうか。
 小事業主の利益から物事を考えず、賃金の統一から考える時代に入っているのではと思った次第である。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿