2011年9月28日水曜日

建労一斉集会で私が説明した資料

〇労働組合の最大の役割は 「労働者間の競争の規制」
  労働者や職人、親方が仕事を得るために手間の安売り合戦をすれば際限なく貧しくなる。
  仲間内で競争をしないしくみをつくり、団結して「高く売る」のが、組合の目的であり役割です。


〇最近の建設職人・労働者関係の運動について       
公契約条例  国分寺市で労務単価の100%
東京の国分寺市は今年12月の市議会に公契約条例案を上程する予定です。
内容
国分寺市が9000万円以上の建設工事を発注する際に、受注者(施工業者)に対して作業報酬下限額(最低賃金)として公共工事設計労務単価の10割(東京 大工 18600円 左官17700円・・)を労働者に支払うことを条例で決める予定。
公契約条例は、現在 全国で千葉県野田市と神奈川県川崎市で施行されていますが、野田市の場合は設計労務単価の8割(14960円)、川崎市の場合9割(15840円)と低く設定されています。
設計労務単価は労働者の8時間労働の賃金であり、残業手当、交通費などは別。また、会社の経費や福利厚生費などは別に現場管理費などで積算される。

設計労務単価とは
農林省・国交省が決めて公共工事積算にもちいるもので、その但し書きとして「下請け契約等における労務単価や雇用契約における労働者への支払い賃金を拘束するものではない」と明記されていますが、今回の国分寺市の公契約条例は、受注施工業者にその100%の金額を労働者に支払うことを求める点で大きな前進です。
しかし、設計労務単価は、大きな事業所の常用賃金ですべてが自前の我々はもっと高くて当然。また前年の事業所の調査を元にするために前年が低ければ低いままか下がっていくしくみとなっています。

問題点として
全建総連・長野建設労連は公契約条例制定の運動を進めていますが、その賃金額をどのようにして決めるか については明確になっていません。本来、公契約の賃金額は、その産業団体と労働組合が交渉で決める労働協約の金額(地域の賃金相場)をもとに決められるものです。しかし、現在その「労働協約」が実現していなく全建総連も労働協約について具体的な取り組みをしていないために低い設計労務単価が使われる結果となっていることが問題です。

東北震災の木造仮設住宅400戸を機会に 新しい展望がひらかれた 
   請負ではなく 全建総連が労働者供給事業をして賃金を協約(大工20000円)

東北で全建総連は全国中小建築工事業団体連合会(全建連)と日本建築士会連合会で「応急仮設木造住宅建設協議会」を結成して400戸以上を完成させてきました。
 入居者や発注者の評判はプレハブに比べていいようです。

今後に活かせる重要な特徴 常用制度と協約賃金   協約賃金制への経験
建設あたって会員からは「請負でやりたい」という希望もありましたが、800人の登録希望者を募り常用で働いてもらうことにしました。被災者を優先して賃金をとりきめました。
大工20000円、電工・配管18000円、手元15000円  交通費は実情で200~2000円
なぜ請負いにしなかったか? 請負の方が利益も能率も上がるようにみえるが、大勢で同じ品質のものを建て、みなが得も損も同じにするため。結果は技術と時間を競い、意欲も高く評判も良かった。


労働者供給事業  将来の労働協約賃金制度を活かす方法
全建総連が労働者供給の認可をとって組合員を派遣し、事業所は決められた賃金を労働者に支払う方式にした。手数料は無料。
将来 大手を規制し、中小建設と同じ土俵で勝負する経験になった。
労働組合はもともと国の許可を受けて無料で労働者を紹介し供給(派遣)することができます。昭和30年頃までは一部の組合で行っていましたが建築ブームや手間請けがひろがるなか有名無実になっていた。現在でも音楽家や運転手の労働組合で行われている。

レッドカード方式  仲間が同じに働く
賃金が決まった常用だと腕の差や現場の規律が心配の声がありましたが、サッカー同様 現場監督の2枚のレッドカードで退場制度を採用し 問題はなくなりました。
この経験は、労働協約制度や供給事業をすすめていくなかで技能を評価し水準を一定にして賃金を取り決めていくために重要です。


大阪・神戸の生コン運転手は780万円 休日125日  関西生コン労組  産業別労働協約の力  

昨年夏 関西の生コン・圧送・バラ輸送労働者約1000人の3つの組合は、関西の生コン・圧送労働者は生コン事業協同組合などと団結して139日間のストライキで竹中・大林などゼネコンの現場をはじめ8割の現場を止めて闘い、1500円引き上げ1㎥16800円にさせ生コン事業者の経営を守るとともに賃上げと労働協約を守った。
関西生コンなど3つの組合は、1982年から生コン協同組合と 企業別ではなく 生コン産業を横断した賃金や休日、退職金など32項目の「労働協約」を毎年集団交渉で結んでいる。
関西の生コン労働者は約3500人そのうち1000人が3つの労働組合に入り、近畿4県500社のうち320社と賃金、休日、退職金、首切りをしないなどの「労働協約」を結んでいる。労働協約は地域の賃金水準も引き上げ、組合に入っていない生コン労働者もこれに近い賃金となっている。


就労履歴管理制度 ICカード「建設共通パス」が動き出した

   健康診断履歴や免許・資格、労災保険、入場者教育歴、働いた現場の経歴などをICカードにして現場での出勤・退場も管理できる制度が大手ゼネコンの現場で始まりすでに数万人登録したともいわれている。住宅産業でも導入する研究会が発足し準備されている。
普及すれば建設労働者の技能が経歴で評価されたり将来年金や退職金の申請の資料になり有利な半面、人手不足に悩む大手にとっては欲しい技能者を抱え込む制度にもなります。


韓国では 重層下請禁止に
韓国の建設業界はもともと日本と似ていることが多く、重層下請構造がダンピング、ピンハネ、不払い、手抜き工事の温床となっていたが、08年には建設基本法で重層下請が禁止された。その結果、大規模工事では元請けでも専門工事でも労働者は直雇で、一人親方は業者になるか労働者として登録することになっている。労働者は「共通パス」制度で労務斡旋や雇用保険などが適用されるようになっている。小工事では自分で請け負う一人親方は残る。

参考
全国と長野の建設労働者の数とそのうち組合(全建総連)に入っている仲間
                      組合員         加入率
全国    建設産業で働く人(建設従事者) 53万9千人   67万人         13% 
建設現場で働く人(建設作業者)  25万8千人  67万人        27%
  長野県     建設産業で働く人(建設従事者)  10万1千人        1万9千人      20%
建設現場で働く人(建設作業者)    4万8千人       1万9千人    42%

2011年9月20日火曜日

9.19

 「9.19 さよなら原発集会」に行った。こうした催しに参加したのは20年ぶり。久々に大人数の迫力を感じた。昔は「仕事」で参加していたが、今回はまったくの「無所属個人」だから気も楽だ。
 この間、日本ではこうした運動が極端に下火になっていたからこの規模は40歳以下のほとんどの人が初体験だろう。それもまたいい。
  参加者は主催者発表「6万人を超えた」、警視庁発表「2万7千人」。会場があふれ駅まで続いていたから6万人超えは間違いない。なのにマスコミはあいかわらず警察発表の「2万7千人」と報じているのは、オソマツ。まして報道は上空からヘリで見、撮影しているのだから、判ってウソをついていることになる。 
 もっともその数の違いはどうでもいい。明治公苑にあふれる数の人が行動するようになってきたことが大切なのだ。
 大江健三郎が、「民主主義の国だから、こうした集会やデモを繰り返して変えていこう」と言っていたが、警視庁や政府、マスコミがどんなに小さく見せようとしても、こうした行動はボディブローのように効いて、社会を動かしていく。
 原発廃止は、当然のことで、いままでそれを見て見ぬふりをしてきた私たちの方に問題が大きい。それを今、いまさらながらでも取り組もうとしているのだ。
 
 

2011年9月8日木曜日

タバコの増税 権力が『大臣の嗜好品』にされてはたまらない

 小宮山厚労大臣が就任早々に「タバコ税の増税」と言いだした。
 「嗜好品」だから当然が人によって 好き 嫌い はあるがNHK上がりのこの人はもともと大のタバコ嫌いだったらしい。それこそ「嗜好」だからそれはそれでいいが「権力者」になったのだから 自らの権力者の立場を踏まえて発言する必要があろう。 いうまでもなく大臣の権限や政策まして税制度が『大臣の嗜好品』であっては国民はたまらないからである。
 ところがこれまた半端な新財相の「税は我が所管」というけん制に、「厚労省を代表して」とダメ押しまでした。
 軽薄  まるで学級委員 
 ダメ続きの民主党政権閣僚に共通するクセは、「権力の怖さを知らず、立場を理解しないまま、いとも簡単に『自分の夢や願望、理想、夢想』を口に出すことだ。鳩山の「県外・・・」、菅の「脱原発」しかりである。大臣閣僚は、権力をもち直接それを実行し実現する立場であり、当然見通しをもってその方策と行動を行うために「発言」をするのである。そこのところをまったくわかっていない。当人たちの頭のなかは「私は偉くなった。みんな私の言うことを聞け!」という、まるで学級委員になって喜んでいる権力欲 征服欲の強いガキのままなのだ。
 健康のため? それとも大臣の好み? それとも医療保険のため・・・・
 国民の健康を所管する厚労大臣に国民の健康をご心配いただくことはありがたいことで また当然の仕事である。もし、本当に心底そう思ってかつタバコが確実に健康を害するのならば厚労大臣は国民の合意を得てタバコそのものをこの世の中から根絶する必要があるだろう。 なにせ単なる嗜好品で「毒物」なのだから。
 ところが、「厚労省を代表して」には医療費の削減のための意図がみえみえである。しかしいくらかは下がるだろうが喫煙が減ると病気が減り医療費が下がると巷間いわれているが本当のところ直接的な相関関係はいまだ曖昧である。もしあったとしても医療費低減を目的にしながらおためごかしに「国民の健康のため」というのはおかしなことである。
 一方で専売制で無くなったとはいえ国が管理してタバコを売られ、税を徴収しながら「医療費の削減のためにタバコをやめろ!」というのは、語るに落ちた論理であろう。
 医療費を削減するために もっとも効果的でかつ社会的正義にかなう方法は、あきらかに高く独占価格となっている薬品代を引き下げさせることである。ところがこの明白なことに厚労省は常に及び腰である。
 戦費調達の歴史 健康のためではない 未成年者喫煙防止法
 タバコへの課税は 戦費調達の歴史である。明治以来長く日本の税制は土地への地租税が主でそれに幕藩以来の産物への課税であった。所得税は「名誉税」といわれごく一部の富裕層から特権と引き換えに課税していた。
 明治9年からタバコに印紙を貼ったタバコ税が日清戦争後の財政不足を補うために葉タバコ専売制になり、37年には日露戦費調達のために全面的に専売として課税をひろげている。昭和20年には国税収入の20%をタバコ税が占めていた。
 明治23年の「未成年者喫煙防止法」も青少年の健康や公衆衛生の観点からではなく、タバコ税が大衆課税であり未成年者からの徴税を回避する税制的な側面が大きい。