2010年10月17日日曜日

手斧(ちょうな)

 村のイベントに建設組合でワークショップを出店した。写真を撮ったのだがその直後デジカメが沈黙したままデーターをださない。これはなんとか吐き出させて載せる予定。
 やったのは手斧削りと鉋削りと丸太を薄く玉切りしてコースターを作ること。手斧というのは鍬のような刃物で、昔はこの道具で丸太を柱や板などに加工した。古い建物の柱や梁にカツカツと叩いたような跡があるそれである。そのままの仕上げもナグリといって力強く美しい。今の鉋が無い時代には、さらにそれを平たい槍の穂先のような槍鉋でなぜるように削って仕上げた。
 この手斧は東京なら60歳以上の大工でなければ使ったことが無くなっている。丸太に乗り、足の爪先を上げてそのギリギリに鍬のように曲がった刃先をしゃくるように打ち込むので慣れていないと危険である。歳をとった大工さんたちがリズミカルに削っていくと人だかりがして、お年寄りは懐かしがり若い人は驚く。
 手鉋の削りも、透けてみえるミクロンの厚みの薄い鉋屑がシューという音ともにテープのようになって宙を泳ぐ。木肌を叩くように削る電気カンナや超仕上げの機械と違って木の細胞を傷つけないで切っているので柱の肌はすべすべして美しく埃すら付かない。見学している人たちは、鉋屑を集めて束ねオンベを作ると持ち帰る。オンベは神主さんが振るハタキのような形もので、建前や御柱祭にも使われる。この薄い鉋屑を撚れば強い紐になり、貰って編んでいる人もいた。
 こうした大工の仕事の様子は、昔はどこの現場でも見られ、子供たちはまるで手品のような職人の手元を飽きずに見ていたものだった。
 やはり、職人はこうした技能を人々にみせなければいけない。それは、単に手先の技術ではなく、こうした手仕事のなかで木の性質やクセを読む力が建物の耐久性や美しさの作り出しているからだ。

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