2010年10月6日水曜日

誰の手を握って

 昨夜はなんとなく語りそびれてしまったので ここに書く。
 亡くなった友に「会いたい」と呼び出された。最後になった治療で入院する前にM君と共に会うことになって東大の脇を歩いて喫茶店に入った。
 「実は妻に離婚調停を申し入れる」と語りだした。俺たちは、もう長く心も実際も切れているのなら、ガンと闘うだけでも大変なのにそんな面倒なことは止めたほうがいいと言った。しかし、彼は今の彼女のために「男のケジメ」としてこれだけはしておきたいんだと言う。自分が死んだあと、彼女を妻の攻撃から守りたい気持ちもあったのだろう。
 夫婦で一方から「もう貴方と人生を共にする気持ちがない」と宣言をされてしまえば、もうお終いである。法律的に妻だ夫だと言ったところで、何の意味も無い。「お前とは離婚をした」と通告したことだけでことは足りてる。後は泣いても叫んでも、形を残しても相手の心が戻らない限りお終いである。
 だからそれだけで十分ではないかと、彼に言った。
 しかし、彼はこう言った。「今わの際に誰の手を握って ありがとう と言って死ぬかの問題だ!」
 私たちは納得した。
 
 
 
 

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